「理学療法士やめとけ」- この警告の背後にある真実
「理学療法士」とネットで検索すると「やめとけ」「やめたい」というネガティブワードが後に続くのをご存知でしょうか?
このような「理学療法士やめとけ」というフレーズは、多くの現役理学療法士やこれから理学療法士目指している方に衝撃を与えます。
しかし、このネガティブな言葉の背後には、理学療法士という職業が直面している実際の課題と現実が存在することを意味しています。
本記事では、この職業の魅力と挑戦、現在直面している理学療法士業界の課題を掘り下げ、真実を明らかにしていきます。
「理学療法士やめとけ」の真意がわかる
理学療法士業界のリアルな状況を解説
理学療法士のポジティブな面を解説
理学療法士とは何者か?
その役割は患者の動作能力の向上を目指し、痛みの管理や再発防止のためのプログラムを提供します。
理学療法士が働く場所は多岐にわたります。以下は理学療法士が働く代表的な場所の一部です
1. 病院:急性期から慢性期、リハビリテーション専門病院まで、幅広い医療機関で理学療法が提供されています。患者の状態に応じた治療を行い、回復をサポートします。
2. 介護施設・高齢者施設:介護が必要な高齢者を対象に、日常生活動作の向上や維持を目的としたリハビリテーションサービスを提供します。
3. 訪問リハビリテーション:自宅で療養している患者のもとを訪問し、個別のリハビリテーションプログラムを提供します。患者の生活環境に合わせた指導が可能です。
4. スポーツチームやアスリートのサポート:スポーツ関連の施設やチームで働き、選手のコンディショニング管理や怪我の予防、リハビリテーションを行います。
5. 研究機関:リハビリテーション医学の研究に従事し、新たな治療法の開発や効果検証などを行います。
6. 民間の治療院:地域社会で開業しているクリニックで、幅広い年齢層の患者に対して外来でのリハビリテーションを提供します。
理学療法士は魅力的な仕事?
2007年、シカゴ大学が約5万人の男女を集め、30年かけて職業リサーチを行いました。チームが調べたのは、「高い満足度を得やすい職業とはどのようなものか」という問題です。
参考文献:Tom W.Smith(2007)Job Satisfaction in the United States4021の研究データが導き出す 科学的な適職 鈴木 祐
あらゆる職種から集めた被験者に仕事満足度を尋ねたところ「もっとも満足度の高い仕事」トップ5はこうなりました。
①聖職者②理学療法士③消防士④教育関係者⑤画家・彫刻家
この結果はアメリカ文化に特有のものであり、日本にそのまま当てはめる事はできませんが「満足度が高い仕事の共通点は他人を気遣い、他人に新たな知見を伝え、他人の人生を守る要素を持っています。
リハビリを通じて患者さんの体や生活が良くなるのを支援するので、感謝の言葉を直接聞く機会がたくさんあります。
患者さんの改善を見ることができるので、仕事に対する満足感が得られます。このように人の役に立つ事ができる仕事ですが・・・実は様々なストレスに直面しているという現実があります。
理学療法士の仕事の日常:挑戦とストレスに直面する現実
確かに、理学療法士の仕事は、身体の不調を抱える人々へのリハビリを通じて、大きなやりがいを感じる職業です。
しかし、その日常は決して「楽で平坦な道」とは言えません。理学療法士は、患者一人ひとりの身体的な限界と向き合い、時には心理的なサポートも必要とされます。
患者へのリハビリの進歩は徐々に現れるものであり、即効性を求めることはできません。常に患者さんに寄り添うことへのストレスや、高い期待を背負うプレッシャーは日常茶飯事なんです。
加えて、継続的な知識の更新が求められ、専門性を高めるための勉強も欠かせません。理学療法士は、これらの挑戦を乗り越えながら、患者さんと日々向き合って仕事をしているのです。
「理学療法士やめとけ」と言われている5つの理由を解説
・苦労して「理学療法士」の国家資格を取得したんだけど・・・という現役理学療法士の方
・現在養成校に通っていて理学療法士国家資格の取得を目指している方
・これから理学療法士養成校への入学を考えている方
ネガティブな意見とは次の3つです
①理学療法士が増えすぎて、飽和状態になってきている
②昇給が少ないため、大幅な給料アップが見込みにくい
③経験やスキルが給料に反映されずらい
④残業・サービス残業がある
⑤肉体的にも精神的にもキツい仕事
PTやめとけ理由①:理学療法士が増えすぎて、飽和状態になってきている
厚生労働省が試算した理学療法士の需要・供給バランスの推移がこちら
この検討会によると、厚生労働省はPTとOTの供給が現在時点で需要を上回っている状況を明らかにし、さらに2040年頃には供給数が現状の約1.5倍に増加するとの推計を示しました。
この数字は2024年現在の日本の理学療法士の有資格者の数です。
PT増加の背景として、平成11年に養成校のカリキュラム改訂、規制緩和政策によりよう養成校が激増。
それにより、毎年13000人の理学療法士が誕生しているという現実。
理学療法士が増えすぎて、今後は希望の就職先につける可能性は低くなっていくことが考えられます。
PTやめとけ理由②:昇給が少ないため、大幅な給料アップが見込みにくい
※いずれも残業代などの各種手当、賞与を含む。 ※データは理学療法士の他に作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士を含む
理学療法士の年収は全業態の平均年収以下というのが現実です。
年齢事の平均年収は以下の通りです
年齢 | 給与所得者平均年収 | 理学療法士平均年収 |
〜19歳 | 255.4万円 | 該当なし |
20~24歳 | 327.1万円 | 335.4万円 |
25~29歳 | 403.5万円 | 392.2万円 |
30~34歳 | 456.8万円 | 421.5万円 |
35~39歳 | 508.6万円 | 455.0万円 |
40~44歳 | 540.6万円 | 497.3万円 |
45~49歳 | 563.5万円 | 517.5万円 |
50~54歳 | 587.7万円 | 514.6万円 |
55~59歳 | 590.2万円 | 570.1万円 |
60~64歳 | 444.8万円 | 462.4万円 |
65~69歳 | 360.2 万円 | 467.3万円 |
平均年収の比較では20〜24歳の時と60〜64歳、65歳〜69歳で優位差はあるものの、他全てで全業態平均年収を下回る結果となりました。
このデータから言えるのは、20代の頃は比較的に他業態より年収が多いけど、30代・40代になるにつれ他業態に年収を越されてしまう可能性が大きいということです。
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PTやめとけ理由③:経験やスキルが給料に反映されずらい
上記の理由として公的な医療制度の下での給料体系があり、個々のスキルや実績よりも勤続年数が重視されがちであることが挙げられます。
・保険点数はベテランから新人まで一律である。
・リハビリは取得単位数の上限がある。
保険医療では平等性が基本理念の1つなので、理学療法士の単価を勝手に上げる事はできません。
また、保険医療におけるリハビリの報酬には経験や技術力などは点数アップ要因にはならず、経験豊富なベテランから新人まで同一の点数なので、売り上げに差が生じません。
上記の理由で理学療法士として経験年数を積んでも、病院の収入源となる診療報酬を得ることに限界があるため、給料に反映されにくいのが現状です。
PTやめとけ理由④:残業が多いし、今だにサービス残業がある場合も
<雑務や書類業務の例>
・カルテ入力
・他の部署との連携書類の作成
・リハビリテーション実施計画書の作成
・退院サマリーの作成
書類や雑務は業務時間内に終わらない事は多いよね
悪しき文化「サービス残業はあたりまえ」
カルテ入力・書類業務に加え、カンファレンスや院内勉強会や研修などは多くの病院や施設で行われていますが、今だにサービス残業当たり前の病院や施設があるのも事実です。
当然ですが休日に行われる研修や勉強会は自己研鑽としてなので、業務とは無関係になります。
「PTやめとけ理由⑤」肉体的にも精神的にもキツい
高齢の患者さんへの介助はもちろん、徒手治療や運動療法も、体への負担大きいですよね。
理学療法士は精神的な負担も大きくのしかかります。
リハビリを進めるためには患者さんの話を傾聴し、分かりやすい相手に合わせた会話を心がけるなど神経を使う場面が多くあります。
患者だけでなく他の医療職や介護職などさまざまな立場の人と、積極的にコミュニケーションをとらなければなりません。
高いコミュニケーション能力を要求される職業だよね。
気も使うし精神的な疲れを事も多いですよね。
現役理学療法士の証言:実際の現場からの衝撃的な真実
現役理学療法士の方や元理学療法士の方は実際のリハビリ現場での仕事を通してどのように感じてるのか?
X(旧twitter)で実際の証言を探してみました。
・収入の観点から「PTやめとけ」との意見
・収入面・リハビリ業界の制度の観点から「PTやめとけ」との意見
・制度・将来性の観点から「PTやめとけ」との意見
・他医療職との収入面比較の観点から「PTやめとけ」との意見
【理学療法士やめとけだと?】いや!まだある理学療法士の7つのメリット
「理学療法士やめとけ」と言われていますが、メリットはないの?
理学療法士という職業は多くの困難や課題に直面することがあるものの、この職には見過ごされがちな多くのメリットも存在します。以下では、理学療法士として働くことの5つのメリットを紹介します。
PTのメリット①:人の役に立つ仕事
本記事の冒頭でも紹介しましたが、アメリカの大規模な「満足度の高い仕事」というテーマの調査結果では理学療法士は満足度の高い仕事第2位に選ばれたことがあります。
満足度の高い仕事における共通因子は「人の役に立てる仕事」であるということです。
理学療法士は患者さんのリハビリテーションを通じて、直接的にその生活の質を向上させる手助けをします。事故や病気で動きが制限された人々が、以前の生活に戻ることができるよう支援することは、非常にやりがいのある仕事です。
PTのメリット②:専門スキルの習得
解剖学や生理学だけでなく、運動学、神経科学、生物力学など、多岐にわたる医学的知識が必要とされます。これらの知識を活用し、患者さんの診断や治療計画の作成、実行にあたります。
これらの知識は他の多くの健康職でも応用可能です。
また、理学療法の分野は進化し続けており、新しいリハビリテーション手法や技術が絶えず導入されています。そのため、現役の理学療法士には継続的な教育や研修が求められることが多く、これが専門スキルの向上につながります。例えば、最新の研究に基づいた治療技術や、特定の障害を持つ患者に特化したアプローチなど、専門性を深めることが可能です。
健康医療に関しての汎用性とリハビリテーションの専門性の両方をキャリアとを通じて身につけることができるんです。
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PTのメリット③:職場の多様性
理学療法士は病院、クリニック、介護施設、スポーツチーム、産業分野など、多岐にわたる環境で働くことが可能です。このため、興味や生活スタイルに合わせて、多様なキャリアパスを選ぶことができます。
携わる分野も専門性を高めるか汎用性を高めるか選べるのもメリット
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PTのメリット④:フレキシブルな勤務スタイル
フルタイム勤務だけでなく、パートタイムや自由なシフト制を選択することが可能です。このような勤務形態は、個人のライフスタイルや家庭の事情に合わせて調整できるため、仕事とプライベートの時間を有意義にバランスさせることが容易になります。
その結果、自分自身の健康や家族との時間を大切にしながら、専門的なスキルを活かして社会に貢献することができるのです。理学療法士は、患者の生活の質を向上させるためのサポートを行う重要な役割を担っており、その仕事の柔軟性が更にその職業を魅力的なものにしています。
PTのメリット⑤:実は理学療法士は残業が少ない
実は全業態平均と比較すると残業時間は4分の1以下なんです
ホワイトな職場の特徴
(1)労働時間が短い(当然サービス残業なし)
(2)残業代はしっかり支払われる
(3)休暇が取りやすい
(4)給与が平均より高く、安定した給与制度がある
(5)福利厚生制度が充実している
(6)チームワークが機能している
※職場(施設)見学の際は上記のポイントをチェックしましょう。
無駄に残業が多い場合は我慢せずに転職を考えてみてはいかがでしょうか?
残業が少ない病院、クリニック、施設は多くありますよ。
PTのメリット⑥:転職に有利【資格は一生もの】
なぜなら現在の日本では高齢化が進んでおり、2025年には75歳以上の人口は2,180万人になると推測されています。
6人に1人が後期高齢者の時代なんです!
介護保険下でのリハビリ需要は多くあります。
また理学療法士業界は、医療・スポーツ・福祉施設だけでなく、産業分野(全国の労働者の健康対策)への進出を目指しています。
このように新しい分野への進出・開拓もしています。
理学療法士は実はやりがいがある仕事
日本で同じ調査をするとしたら上位に入るの?と聞かれたら難しいけど
理学療法士の仕事で、患者さんと一歩一歩目標達成できた時の喜びは格別ですよね!
PTのメリット⑦:副業➕本業で収入UPしやすい
たしかに理学療法士の平均年収は全業態の平均年収以下かもしれませんが
特別な事をしなくても年収500〜600万円のレンジは十分可能な職業です。
参考記事
さらに余裕があれば、週1日を非常勤勤務を入れたり、副業をすることで年収UPを目指すことができます。
・本業➕副業で年収UP
・本業➕非常勤で年収UP
・夫婦共稼ぎで世帯年収UP
など年収UPへの道はいくつもあります。
結局、理学療法士に向いている人とは?
理学療法士という職業は、専門的な知識と技術が求められるだけでなく、特定の人格特性や興味を持つ人に最も適しています。理学療法士に向いている人の特徴を以下のように分けて説明します。
①:人と関わるのが好きな人
そのため、コミュニケーション能力が高く、人と接することに喜びを感じる人には特に向いています。
患者さんの小さな進歩を共に喜び、時には励まし、サポートすることで、信頼関係を築くことが重要です。患者さん一人ひとりに寄り添うことができる温かみのある接客が求められるため、人と話すことが好きで、感情豊かである人が成功しやすい職業です。
患者さんの小さな変化に気づける人
理学療法では、患者の微細な身体的変化に注目し、それを評価して治療計画を調整することが求められます。
このため、観察力が鋭く、些細な変化を見逃さない人に適しています。患者の動作一つ一つに意味があり、その変化を敏感に感じ取ることができれば、より効果的な治療を提供することが可能です。
心身ともに健康な人
患者を支援して動かすことや、時には身体を使って治療を行うため、自身の体力と健康を維持することが必要です。また、精神的な健康も同様に重要で、ストレス管理能力を持ち合わせている人が向いています。患者さんの心情に寄り添いつつ、自己の感情をコントロールする能力が求められるのです。
探究心を持っている人
医療技術は日々進化しており、新しい治療方法や技術が常に登場しています。そのため、学び続ける意欲が強く、常に最新の情報を追求し続けることができる人が理学療法士として成功します。専門知識を深めることはもちろん、実践的なスキルを磨き続けることが、患者さんに最高の治療を提供する上で不可欠です。
これらの特性を持つ人は、理学療法士として仕事にやりがいを感じることが期待できます。
【理学療法士はやめとけ?】自分で切り開く理学療法士の未来
理学療法士として成功するためには、ただ専門知識を学ぶだけではなく、患者さん一人ひとりに対して真摯に向き合う姿勢が求められます。また、医療や福祉の現場は日々進化しており、新しい技術や治療法を学び続ける必要があります。このような環境で、自分自身の専門性を深め、さらにはチーム医療の中で協力し合いながら働くことが重要です。
未来の理学療法士としては、テクノロジーを取り入れた治療方法や、遠隔医療など新しい領域への挑戦も期待されます。例えば、VR技術を使ったリハビリテーションや、AIを活用した患者管理システムなどが開発されています。これらを活用することで、より効率的かつ効果的な治療が提供できるようになるでしょう。
しかし、技術の進歩だけではなく、患者さんとのコミュニケーション能力や、エンパシーを持って接することができるかが、理学療法士としての質を大きく左右します。患者さんの小さな変化を見逃さず、それに対する適切な対応をすることで、信頼関係を築き、治療効果を高めることが可能です。
結論として、理学療法士を目指すのは決して簡単な道ではありませんが、人の役に立ち、社会に貢献することにやりがいを感じる人にとっては、非常に価値のある職業です。未来を切り開くためには、自己成長を続け、常に最新の知識と技術を追求し続けることが求められます。
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